…命と引き換えに、1本の映画に全てを賭けた男がいる。俳優、金子正次さん…
■金子正次プロフィール
1949年愛媛県津和地島出身。上京後、原宿学校(現在 東京映像芸術学院)を卒業し劇団「東京ザットマン」(後の「ザットマン7」)立ち上げ。1983年10月完全自主映画「竜二」にて初主演。同年、11月6日癌のため亡くなる。
■映画「竜二」…への道
男は、脇役人生に常に苛立っていた。「主役」じゃないと意味がない、「スター」になる…と。
81年、癌の手術を受け、男は自ら脚本を書き、自分主演の映画を作ろうと配給会社を回る。
しかし、有名ではないイチ俳優を日本の映画会は相手にしなかった。
そんな金子を見かけ、親友の松田優作も売り込みを手伝うが「優作さんが主役なら…撮るんだけどねぇ…」
「配給なんか、関係ねぇ!!」
男は仲間達と資金を集め、「竜二」製作へと突き進む。
が…映画を撮ったものなど誰もいない。資金はみるみる減るばかり、監督は代わり、カメラもフィルムが惜しくなかなか回せない。それでも、金がなければない程、出演者は一丸になり、異常な程、熱い芝居を超えた芝居が続き完成。
配給は、松田優作の奔走もあり、東映セントラル。いよいよ1983年10月29日ロードショーが始まる。
が…金子正次は公開中、11月6日癌のため、この世を去る。まだ、33歳の若さであった。
スクリーンには以下のテロップが…
「竜二」主演の金子正次 さる11月6日未明亡くなりました。
金子正次の「竜二」は永遠に不滅です。
■映画「竜二」金子正次
…新宿の三東会の竜二(金子正次)はルーレット賭博等で羽振りのよいシノギを展開。金にも女にも不自由しない日々。
が、男には別れた妻子が。男は、妻子と共に生きていくと決意する。
…竜二はヤクザ映画。でも、拳銃を一発も撃たず、殺し合いもないヒューマン作品です。
それなのに、金子正次の凄みや、ゴロ巻きは、どのヤクザ映画よりもリアルで迫力感じます。
まさに命を削り削った生の声であり、背中であり、眼差しなんです。
他にも、妻子とのシーンでは哀愁感漂い、切なすぎるのですが、それもそのはず…実の娘さんが、娘役だったのです。
■松田優作さんも金子正次さんと同じ命日(11月6日)
1983年11月6日亡くなった金子正次さんですが、実はその6年後の同じ日、親友松田優作さんも亡くなります(1989年11月6日)
松田優作さんも金子正次さん同様、癌を隠し、最後の映画「ブラックレイン」にて、演技を超えた凄まじさを表現し亡くなりました。
…さて、久しぶりに「竜二」借りに行こうかなぁ。…因みに主題歌はショーケンです。これまたビックな助太刀であり、これまた切ない歌なんです。