殴られ屋(晴留屋明)~2話~

「私だって正しい意見に耳を傾けたい。でも、正しく当たり前の事をしていれば生きていける時代は終わった…」(晴留屋明)
男は今夜も、ボクシンググローブと1枚の立て看板を抱え、歌舞伎町へ向かう….。

■「殴られ屋ルール」

ルールは、ボクシンググローブをつけたお客さんが1分間殴り続ける。男はヘッドギアだけをつけ、身体一つギリギリでかわしていく。(男性1分¥1000 女性¥500)この商売を始めた男の名は、晴留屋明。元プロボクサーである。

本日、殴られ屋2話
殴られ屋(晴留屋明)~1話~は、こちらから→https://tetuzou-kisi.com/?p=2237

■殴られ屋(晴留屋明)~新宿歌舞伎町コマ前~

殴られ屋の拠点は、新宿区歌舞伎町のコマ前。意外にもスタートは六本木で、他にも池袋西口公園、渋谷のハチ公前でも商売したが、ここが一番いい!! 歌舞伎町だと、誰かがチャレンジ始めると続々とチャレンジャーが手を上げ、怖いもの見たさの観客の輪が幾重にもなり、更にチャレンジャーが列をなす。
「最高100人を超えるチャレンジャーを相手しました。」(晴留屋明)

素人のパンチは、1分間だと40発が限度。これを1分間で計算すると、パンチ1発25円。これをアウトボクシングでかわしては、お客も飽きるので、全て、相手に踏み込み、インファイトでかわす(パーリング、ウィービング、ダッキング)
リング殴られ屋

始めのうちは一人で営業受付レフェリーなしだったが、晴留屋明さんは昔から不思議と人が集まるタイプで、この場所にいるホームレスがレフェリーをやり、声がけを現場の仲間がやってくれたりし、お陰様でチャレンジャーには困らなかった。

■殴られ屋(晴留屋明)~天敵~

殴られ屋という商売は路上で独断で始めた商売。勿論、路上営業の許可もとらないしおりない。「警察の撤去対象」になり交番での始末書は日常茶飯事。
人気が出るほど、警察に目がつきやすくなり商売しづらくなる。ところがこれも晴留屋明さんの人柄か…営業許可がとれなくても、一応、毎回歌舞伎町交番に挨拶してから営業していた為、警察官とも親しみ、非番にチャレンジしてくるものもいた。
もう1つの天敵は、ヤクザ。ショバ代の請求にくるが「お金がない」事を説明し続け、謝る日々。
とある日。数人のヤクザが来て、若手がショバ代の件で脅しを入れると、後ろで話を聞いていた親分が

「バカヤロー殴られて生きている奴から、金がとれるか!!」
以降、ヤクザの脅しもなくなり、チャレンジしてくるヤクザまで増える。
が、話はなかなか上手くいかず、喧嘩無敗のヤクザに、わき腹を折られた事も…。

常に捨てる神あれば、拾う神ありと…晴留屋明さんの人間性もあるが、映画を超えた映画が回り続ける。
<つづく>

■岸哲蔵ホールライブ