ババの3つの教え

■「ババの3つの教え」

1987年5月24日…米沢市某病院。
「今夜が山です!」
あれは、日曜日の夜だった。
もう、34年。

祖母ことババは明治の女性だから、決して孫を猫可愛がりはしない。
口下手で褒める事もお駄賃をあげる事もない。
でも、ババの作る味噌汁を超える物を飲んだ事がない。
当たり前だ。朝から煮干しの頭と腑をむしり、
濾過した水に十分に浸すから、風味も奥行きも違う。
魚の目利きもよく、カド(若いニシン)の焼き加減が絶妙だった。
当たり前だ。魚焼き器の前で番しているのだから。

ババは手を休める事を知らない。
朝起きたら、草むしり、掃除、編み物、
包丁だって鎌だって研ぐ、買い出しだって自分で行く。
私が小さい頃一緒にドラマを見ている時でも、
みかんやグレープフルーツを剥いてくれて私の器に入れる。
だが、参っちゃうのが、グレープフルーツの最後の皮まで口を使い、
キレイに剥くから「マジかよ!」って思いつつも、
金魚の様にパクリと食べてた。

ババに言われた3つの教えは、今も守っている。
「男は人前で泣くな!」
「お天道様あがっているうちは、寝るな!」
「昼間から酒を呑んではいけない!」
ババは足腰が強く昔はリアカーも引いたそうだ。子供も9人産んだ。
ただ、血管系で倒れ亡くなる2年前から入院していた。

亡くなる寸前、母に言われババの手を両手で握ると、
数秒後に、物凄い電流が私の手を通過した!
その次の瞬間、お医者の剣幕が変わり、
必死に心臓マッサージを始めた。人生で初めての肉親の死だった。

私の中にはババの言葉が住んでいる。三つ子の魂百まで私が抜け殻になるまで私は変わらない。