■炎の男 輪島功一
1975年1月(31歳) 2度目の世界王座獲得。
1975年6月(32歳) 1度目の、柳済斗との防衛戦。
…柳は、日本人に滅法強く、日本人のみで
30戦全勝の、パワーファイター。
試合は、5ラウンドまで、互角。
そして、5ラウンド終了のゴングが….
輪島は、緊張から解かれたかのように、両腕のガード(ディフェンス)
を下げ、身体の力を抜く….
と、そこへ、柳のこん身の右ストレート炸裂!!
もんどりうって倒れる輪島。
わざとではないが、完全な反則パンチ。
勿論、輪島のダウンはとられないが、、、、効いた!!
6ラウンド、足元ふらつく輪島。
そして、7ラウンド、連打の前に、KO負け。
…32歳の輪島。
ジム側も、ファンも、家族でさえ「引退」と思った時…
「もう1度」と、決意する輪島。
あの、ゴング終了間際での油断がなければ….いける!
関係者の反対を振り切り、毎日30キロのロードワークを開始。
長身強打の柳のリーチを殺すための、中に入る練習を、
ひた繰り返す。
ジム、テレビ局、そしてボクシング団体との交渉をまとめ、
「再戦」決定!!
…試合前日の両者立会いでの記者会見。
トレーニングで徹底的に追い込んだ輪島は、風邪防止のため
マスクをつける。
と、記者が
「輪島さん、風邪ですか?」と
機転の利く輪島は、
目で言わないでという表情をつくり、
「ゴホゴホ….」
輪島は、一計を案じ、トイレへ行く。
そう、相手陣営の誰かが必ずトイレに来るはずだ!!
トイレで待ち構える輪島。
と、そこへ、柳のトレーナーが!
軽く咳き込む輪島。
トレーナー「輪島….風邪か??」
輪島、咳き込みながら「大丈夫、大丈夫」と、繰り返す。
トイレを後にするトレーナー….
横目でニコッと笑い出て行く。
この時、輪島は、「勝利」を確信!!
柳陣営へ、駆け込むトレーナー
「輪島….わじま、ワジマ、風邪ひいたよ!!」
歓びにわく、柳陣営!!
1976年2月(32歳) 日大講堂 1万2000人 超満員
日本と、韓国の旗が振られる中、いざ、ゴング!!
余裕の表情でリング中央へ向かう柳。
と、、、
猪突猛進、飛び込む輪島。
いきなりのラッシュ!
…この時代のボクシングは15ラウンドで、世界戦ともなると、
まずは、相手の様子を見るのが常識なのだが…
しかも、前回、壮絶なKO負けをした輪島は、ビビッて慎重に
出てくると予測していた柳は、ロープを背にしての苦しい闘いが
続く。
それに、風邪をひいてた…はず….だし。
が、さすが王者の柳は、下がりながらも、強打を打ち込んでくる。
途中、飛び込んでくる輪島に、強烈なカウンターをヒット。
後年、輪島は言う。
この一打は強烈で、「目の前が、真っ赤」になるほど、
火花が散ったそうだ。
が、そんな時だからこそ、同じリズムでステップを踏み、
距離感を微妙に調整するそうだ。
11ラウンド終了。
輪島のセコンドから
「ポイントで7~8勝ってるから、後は、安全な距離で
足を使って逃げろ!」
12ラウンド
またも、猪突猛進に飛び込む輪島。
セコンドに怒られても、変えない。
輪島は言う。
「こういう場面で逃げに入った瞬間、勝負の流れは変わる!」
13ラウンド14….
そして、最終の15ラウンド
とにかく、飛び込む輪島。
柳も、判定では勝てないと、KO狙いの大きいパンチを
放つ。
が、パンチのショットが大きくなるほど、ガードはあき、
柳の顔面やアゴのあく瞬間もまた、増えて….
「ここだー!!」
残り1分。輪島の右が、柳を捕らえた!!
腰が砕け、ダウンする柳。
カウントは、柳の回復を待たず、冷静に刻み行き….
輪島KO勝ち!!
下馬評、世間の声をも制し、輪島32歳で3度目の世界王者に
返り咲く!!
王者のまま引退??
が、、、、
32歳の輪島は、
「ベルト巻いたまま引退なんか出来ない。
何処か身体を故障した訳でもない。
駄目になるまで闘うのが、男!」
…33歳で迎えた防衛戦はKO負け。
そして、もう一度タイトルへ挑戦し…..散る。
1977年6月、炎の男、輪島功一、34歳で引退する。
現在、西荻窪にて、ボクシングジムを開く輪島は言う。
「練習は根性。試合は勇気。
勇気のないヤツは、上にはいけない!」と….
….思えば、第二次世界大戦が終え、辿りついた北海道。
小さい頃から、労働、労働の日々だった。
その苦労の中培った、体力と眼力….機転。
この土台あっての、輪島氏だと感ずる。
….輪島の選手時代の会長は言う。
「輪島の凄いところは、貧しい暮らしをしてきた者の、暗さがないこと。
いつも、輪島の周りには、楽しそうな顔をした、友達が沢山いた。」
2014年
経済の浮き沈みに苦しむ方々が決して少なくないこの世だからこそ、
輪島功一氏を、炎の男を伝えたく、連載しました。
読んで頂き、感謝してます。
~終了~
モンスター井上や渡辺二郎など、世界に通用するチャンピオンも存在するけど、炎の男輪島功一は日本人の魂を揺さぶるチャンピオンでした。勝ち方も凄いけど、負け方も感動しました。
本当のレジェンドですね。
ファイティング輪島さん。コメント有難うございます。返信遅れて申し訳ございません。 輪島さんは、樺太(現在/ロシア サハリン)出身。敗戦後、命からがら家族で北海道に移住し、学校に行きながら漁師をしていたそうです。技術や体力を超越したハングリーさやガッツが人を魅了し、苦労の中身に着けた考える力が、試合の中活かされたのではないでしょうか。…そうですね、本当のレジェンドですね!